さざなみ
原題:45 Years
2015/イギリス/95分
監督:アンドリュー・ヘイ
受賞歴:ベルリン国際映画祭主演男優賞・主演女優賞 アカデミー賞主演女優賞ノミネート
あらすじ
結婚45周年を祝うパーティを土曜日に控え、準備に追われていた熟年夫婦ジェフとケイト。ところがその週の月曜日、彼らのもとに1通の手紙が届く。それは、50年前に氷山で行方不明になったジェフの元恋人の遺体が発見されたというものだった。その時からジェフは過去の恋愛の記憶を反芻するようになり、妻は存在しない女への嫉妬心や夫への不信感を募らせていく。(映画.comより)
夏りょうこからのメッセージ
男と女の間には、深くて暗い川がある。そんな昔の昭和歌謡曲を思い出した。
最初はね。結婚前の出来事だし、妻も夫の思い出話につきあってあげてたんですよ。ところが、その日から夫は、一緒にいても心ここにあらず。屋根裏部屋に籠もって彼女の写真を眺めたり、こっそり遺体に会いに行こうとしたり…そうするうちに、その(隠しているつもりでもバレバレな)様子をじっと見ていた妻が、見知らぬ彼女への嫉妬に苦しむようになっていく。
だって彼女は永遠に若く、2人の思い出も永遠に美しい…この45年間、夫は本当に私を愛していたのかしら?
劇中で印象深く流れるのが、ジャズのスタンダード・ナンバーとして有名な「煙が目にしみる」である。1958年にザ・プラターズによってリバイバル・ヒットしてから何度もカヴァーされ、CMでもよく耳にするこの不朽の名曲が、夫婦の大切な歌として使われている。
男女の結婚観や恋愛観の決定的な違いがじわじわと浮かび上がり、長い年月をかけて積み上げてきたものが数日間で崩れてゆく。夫への猜疑心と不信感がさざなみとなって揺れ始め、ついに大きな波となって押し寄せるラストシーンは映画史に残るかも。
妻を演じるシャーロット・ランプリングの繊細な表情としぐさが素晴らしい。夫婦で見ると危険な映画No.1だが、ぜひとも夫婦で見てほしい気もする。
関連ニュース
『さざなみ』ヘイ監督「ゲイの僕が“誰かと繋がりたい心”を理解する際の問題を描いた」|結婚45年の夫婦の危機をアカデミー賞ノミネートのシャーロット・ランプリングが演じる - 骰子の眼 - webDICE