たかが世界の終わり
原題:Juste la fin du monde
2016/カナダ・フランス/99分
監督:グザヴィエ・ドラン
出演:ギャスパー・ウリエル ヴァンサン・カッセル マリオン・コティヤール ナタリー・バイ
受賞歴:カンヌ国際映画祭グランプリ
あらすじ
若手作家のルイは自分がもうすぐ死ぬことを知らせるため、長らく疎遠にしていた母や兄夫婦、妹が暮らす故郷へ帰ってくる。しかし家族と他愛のない会話を交わすうちに、告白するタイミングを失ってしまい……。(映画.comより)
夏りょうこからのメッセージ
自分の死期を伝えるため12年ぶりに帰省した主人公と、突然の再会に戸惑う家族たちの様子が、スリリングな会話によって描かれている。
家族の葛藤を兄嫁だけが知らない。だから彼女は傍観者として、孤独な主人公と心を通わせることができるのだろう。マリオン・コティヤールの愁いを帯びた美しい瞳が、彼の気持ちを汲み取ろうとじっと見つめている。
ひょっとすると一番興味深い存在は、何かと主人公に突っかかってくる兄かもしれない。彼の攻撃性は恐怖の裏返し。弟の帰省目的なんか知りたくない。だから先回りして、弟の言葉を封じ込めようとしている。
母と息子が2人きりになるシーンが好きだ。自分に香水をふりかけ、それを理由に息子を抱き寄せるしかないその寂しさ。「理解できないけど愛している」ときっぱり言い切れる強い母性。派手なイメージとは裏腹に子供たちのことをよく観察している彼女は、やっぱりお母さんなんだ。
表情の小さな揺らぎまで映し出されてしまうから、私たちは顕微鏡で彼らの心の奥まで覗いているような気分になる。残された家族は、どこにも飛び立てずに死んだ小鳥を見つけるだろうか。
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