ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲
原題:Feher Isten
監督:コーネル・ムンドルッツォ
出演:ジョーフィア・プソッタ
受賞歴:カンヌ国際映画祭でグランプリ・パルムドッグ賞。
あらすじ
3歳の少女リリは、可愛がっていた愛犬ハーゲンを父親に捨てられてしまい、必死でハーゲンを探す。一方、安住の地を求めて街中をさまよっていたハーゲンは、やがて人間に虐げられてきた保護施設の犬たちを従え、人間たちに反乱を起こす。(映画.comより)
夏りょうこからのメッセージ
犬たちの声が聞こえた。本当だよ。
舞台は、雑種犬だけに重税が課されるようになった街ブタペスト。最初はかわいい少女と犬の心温まるストーリーかと思いきや、途中から予想もつかない怒涛の展開となり、落としどころがどうなるのかとハラハラし通し。
ただでさえ珍しい東欧映画の中でも、これは異色のドラマだと言ってもいい。
とにかく犬たちの自然な演技?に目が釘付けである。自分を捨てた主人を信じて待っている時。うなだれて街を歩き回り、やっと出会った人間に虐げられた時…その哀しみ。無念。
だから、
いいよ。やっちまえ!人間どもを噛み殺せ!
彼らの抑圧された怒りが大きな塊となって一気に爆発する終盤は、一種のカタルシスだ。
ちなみにCGは一切なし。なので、人間たちが犬軍団に踏みつけられ、追いかけられ、恐怖におののく緊張感と迫力たるや、ああ久々に映画を見たという気分にさせられて気持ちがよい。
楽団でトランペットを吹いている少女が愛犬のそばでよく練習していたのが、リストの「ハンガリー狂詩曲第2番」。映画の中で繰り返し流れるこの曲が、物語の重要なカギとなる。
暴徒と化して疾走する犬と狂詩曲の切ないメロディが交差し、街は夜明けを迎える。
権力に抑圧された者たちの救いはどこにあるのか。静謐なラストシーンには身じろぎもできない。