運動靴と赤い金魚
原題:Bacheha-Ye Asen
1997/イラン/ 88分
監督:マジッド・マジディ
出演:ミル=ファロク・ハシェミアン バハレ・セッデキ
あらすじ
小学生のアリは修理してもらったばかりの妹ザーラの靴を買い物の途中でうっかりなくしてしまった。(映画.comより)
夏りょうこからのメッセージ
子供は宿題よりも先に家の手伝いをし、たった1足の靴を失くしても、貧しさゆえにそのことを言い出せない。
昔の日本もそうだったと思う。
幼い兄と妹が子供なりに知恵を出し合い、1足の靴を分け合ってピンチを乗り切ろうとするシンプルな物語だ。
学校が終わると妹は、靴を待っているお兄ちゃんの所へまっしぐら。たったったったっ。必死に走る健気な後ろ姿ときたら。それをジリジリと待つお兄ちゃんの半ベソ顔ときたら。
子供らしい綱渡り的な計画に、「ああ、どうかハプニングが起こりませんように」とハラハラしながら祈るばかり。
靴を失くすという小さな事件を通して見え隠れするイランの現実が、じわりと心に迫る。
言葉にしなくても彼らの感じていることが雄弁に伝わってくるという演出の力強さ。きっとこの監督は観客を信じている。子供を使ったお涙頂戴の映画とは一線を画す秀作である。