偉大なるマルグリット
原題:Marguerite
2015/フランス/129分
監督:グザビエ・ジャノリ
出演:カトリーヌ・フロ アンドレ・マルコン
あらすじ
1920年、フランス。新聞記者のボーモンは、パリ郊外にある貴族の邸宅で開かれたサロン音楽会に参加する。しかし主役であるマルグリット夫人は、救いようのない音痴だった。
(映画.comより)
夏りょうこからのメッセージ
ひどい音痴にも関わらずオペラを歌い続け、ソロ・リサイタルを開いてCDまで出している実在のオペラ歌手フローレンス・フォスター・ジェンキンス。
“音痴の歌姫”と呼ばれた彼女をモデルにしたこの作品は、芸術へのケタ外れな片思いが滑稽で切なく、また同時に、好きで好きでたまらないことに没頭するって素晴らしい!と勇気づけられもして、見終わった後「ひょっとして、これが芸術の本来のあり方ではないか?」と思ってしまう。そんな不思議な映画だ。
とにかく彼女の歌いっぷりが、一見ならぬ一聴の価値あり。音痴もここでまでくればむしろ芸術的である。
かの有名なモーツァルトの「夜の女王のアリア」(「魔笛」)を全部歌いきるシーンなど、ハラハラするやら応援したくなるやらで、素人の綱渡りを見ているようだった。
実は彼女は、自分がひどい音痴であることに気づいていない。だから彼女は人前でどんどん歌うし、聴衆が思わず失笑してしまっても礼儀で拍手しているだけでも、それを「ウケている」と解釈するので幸せそう。つまり今風でいうと「イタイ女」だ。
でもいいじゃないの。好きならば。
いや実際、彼女の一途な姿に感動して本当にファンになった人も多かったようで、それもわかる気がする。
マルグリットはね。大富豪だけど夫が自分に関心がないので、寂しいんですよ。だから芸術に没頭してしまうんですよ。そんな女心もわかってあげて。
ちなみに同じく彼女をモデルしたイギリス映画「マダム・フローレンス!夢見るふたり」(2016/監督:スティーブン・フリアーズ)があり、こちらはメリル・ストリープ主演なのでまた違った味わい。でもその前に、まずはフローレンス本人の歌声をYouTubeでお聴きあれ。
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