Kino

夏りょうこの空想映画館

おみおくりの作法

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(C)Exponential (Still Life) Limited 2012

原題:Still Life

2013/イギリス・イタリア/91分

監督:ウベルト・パゾリーニ

出演:エディ・マーサン ジョアンヌ・フロガット

あらすじ

ロンドンに暮らすジョン・メイは、孤独死した人を弔う民生係として働いてきが、人員整理で解雇を言い渡され、自宅の真向かいに住むビリーの弔いが最後の案件になる。これまでも誠実に故人と向き合い、弔いをしてきたジョンだったが、最後の仕事にはいつも以上に熱心になり、故人を知る人を訪ね、葬儀に招く旅を経て、心の中に変化が生じていく。(映画.comより)

 

夏りょうこからのメッセージ

“在宅ひとり死”をした人にも人生はある。だからそれは“孤独死”ではない。

 

主人公は死者の部屋の中や持ち物を観察し、死者がどんな人だったのか、どんな人生を歩んできたのか、その証を見つけようとする。そして見知らぬ死者を想い、心を込めて弔辞を書くのである。

 

実は彼自身も独身で、家族も友人もいない真面目で寡黙な男。これといって趣味もなく、何の取り柄もなさそうな几帳面な男で、誠実にコツコツと仕事に取り組むだけの日々を送っているあたり、見ていて身につまされてしまう。

 

そう、彼にとって在宅ひとり死は他人事ではないのだ。

 

そんな彼が、最後の仕事としてある男性の葬儀を執り行うことになり、彼の人生を辿る旅に出る。彼に家族はいたのか。なぜ一人で暮らすようになったのか。行く先々で関係者たちから話を聞いているうち、彼の人となりが少しずつ見えてくるのがスリリング。

 

孤独死した人物の葬儀を行なう仕事」に関する新聞記事を読んだ監督が、ロンドン市内の民生係に同行して取材を重ね、それらの実話を基に作り上げた映画だという。それだけに説得力があり、アッと驚くショッキングな展開の果てには、予想もしなかった温かい涙が溢れ出す。

 

自分の棺桶を埋める場所まで用意していた主人公は、自分は1人で生きて1人で死んでいくと思っていたのだろう。そんな彼は幸せだった?これは悲劇?ハッピーエンド?見る人の価値観や人生観が問われるラストシーンだが、ここに作品のテーマがあるのではないかと思う。

 

たとえ誰にも見送られなくても、死者が本当に独りぼっちだったのかどうかはわからないのだから。

 

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www.youtube.comwww.youtube.comwww.youtube.comインタビュー:映画「おみおくりの作法」――ウベルト・パゾリーニ監督に聞く – クリスチャン新聞オンライン

+++ウベルト・パゾリーニ・インタビュー 『おみおくりの作法』 取材・文:大場正明+++