オルランド
原題:Orlando
1992/イギリス・ロシア・イタリア・フランス・オランダ/94分
監督:サリー・ポッター
あらすじ
青年たちが女性的な装いを好んだ16世紀末エリザベス一世の治下、晩餐の宴で青年貴族オルランドは女王に詩を捧げた。すると女王はオルランドの若さを愛し、「決して老いてはならぬ」という条件つきで屋敷を与えた。(映画.comより)
夏りょうこからのメッセージ
裏切られた男。抑圧される女。どちらも私。愛と生きがいを求めて自由に生きようとする者にとって、性別は邪魔になる。
バージニア・ウルフ原作のこの映画は、主人公が性別と時空を超えてアイデンティティを見つめ続けた美しい寓話だ。皮肉交じりにジェンダーを描いているだけに、映画では去勢されたカストラートのソプラノ声が響き渡り、老いた男優が女王を演じ、中年男性が天使に空を飛んでいて頭がクラクラ。
一方、ファッションや生活スタイルが走馬灯のごとく移り変わっていくのを見るのも楽しい。
何よりも、ティルダ・スウィントンの中性的な魅力をこれほどまでに引き出した作品は他にないだろう。陶器のようにのっぺりとした肌。クールな思慮深さをたたえた瞳。性別どころか人間さえも超えている役なのに違和感がなく、実はAI搭載のアンドロイドだと言われても納得してしまいそうだ。