Kino

夏りょうこの空想映画館

刑務所の中

f:id:naturyoko:20200714153444j:plain

2002/日本/93分

監督:崔洋一

出演:山崎努 香川照之 田口トモロヲ 松重豊 椎名桔平 大杉漣

受賞歴:ブルーリボン賞監督賞

あらすじ

銃砲刀剣類等不法所持及び火薬類取締法違反で懲役3年の実刑判決を受け、北海道・日高刑務所に送られたミリタリーおたくの中年・ハナワ。彼は、雑居房の4人の受刑者らと共に、厳しい規律に縛られながらもそれなりに快適な獄中ライフを過ごしていた。(映画.comより)

 

夏りょうこからのメッセージ

漫画家花輪和一が出所後に堀の中の生活を描いた漫画を映画化。刑務所の様子や囚人たちの暮らしがエッセイ風に細かく再現されているため、知られざる世界を見ることができるというだけでも退屈しないが、クセ者ぞろいの男たちが厳しい規律に従って送る共同生活が時に笑いを誘い、実話とは思えないコミカルな作品になっている。

 

主人公が同居しているのは、婦女暴行罪、殺人罪、窃盗罪、覚せい剤取締法違反というバラエティに富んだ犯罪者4人。行進して作業場に行く際には指先が曲がっていても厳しく注意され、クロスワードパズルをノートに写さず直接書いただけで、独房(懲罰房)行きになるなど、当然と言えば当然だが細かいルールあり。

 

何かと下ネタで盛り上がるむさ苦しい男たちが、まるで男子高校生のようである。

 

そして意外にも、彼らの食事がなかなかよい。

 

たとえば年末・正月は白米とおせち料理。羊かんや栗きんとんなどの甘い食べ物や牛丼などの豪華料理も出るし、普段は麦ごはんだが、パンの日には小倉やマーガリン、フルーツを自分流に付けながら美味しそうに食べる。

 

それにしても、刑務所で映画上映会があるとは。参加回数は受刑者ランクによって決められ、その時は足踏み行進しなくてもいいとかお菓子が支給されるとか、大の大人がそんなことで一喜一憂。

 

ああ、でもそうなってしまうのが刑務所暮らしなのだろう。

 

自由を奪われた環境で、主人公は自分なりの楽しみを見つけようとする。原作は手塚治虫文化賞の最有力候補になったが、「自分はマイナー漫画家である」という理由で受賞を固辞したという。

 

なかなか信念のある男じゃないか。もう堀の中には戻らないでね。